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東京地方裁判所 昭和49年(ワ)10323号 判決

主文

一  東京地方裁判所昭和四九年(手ワ)第一二九六号約束手形金請求事件について、同裁判所が昭和四九年八月七日言い渡した手形判決主文のうち、被告に金一三四万円及びこれに対する昭和四九年五月一五日から支払済まで年六分の割合による金員の支払を命ずる部分並びに同部分についての仮執行宣言を認可し、その余を取り消す。

二  右取消にかかる部分についての原告の請求を棄却する。

三  被告は原告に対し金二六〇万円及びこれに対する昭和四九年一二月一四日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

四  訴訟費用はこれを一六分し、その一を原告、その余を被告の負担とする。

五  この判決第三項は仮に執行することができる。

事実

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し、金四二〇万円及び内金一六〇万円に対する昭和四九年五月一五日から、内金二六〇万円に対する昭和四九年一二月一四日から各支払済みまで、年六分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

三  請求の原因

1  約束手形金

(一)  原告は、別紙手形目録記載のとおりの約束手形一通(以下本件手形という。)を所持している。

(二)  被告は本件手形を振り出した。

(三)  原告は本件手形を満期の日に支払のため支払場所に呈示したが支払を拒絶された。

2  請負代金

(一)  原告は給排水、衛生設備工事の請負を業とする会社であるが、昭和四八年五月一〇日、被告との間に左記のとおりの工事請負契約(以下本件契約という。)を締結した。

(1) 工事名  第一観光社宅新築工事に伴う空調・衛生設備工事(以下本件工事という。)

(2) 工事場所 東京都豊島区池袋本町一丁目一一番九号

(3) 着工時期 昭和四八年五月一〇日

(4) 請負代金 金一五九〇万円

(5) 支払方法 第一回 右契約時金四七〇万円

第二回 昭和四八年六月三〇日金五〇〇万円

第三回 完成引渡時金六二〇万円

(二)  原告は右約定に従い昭和四八年五月一〇日本件工事に着手し、遅くとも昭和四九年一月一四日までに右工事を完成してこれを被告に引渡した。なお、工期の特約はなかつた。

(三)  被告は右請負代金のうち一一七〇万円の支払をしたが残代金四二〇万円の支払をしない。

3  よつて原告は被告に対し、本件手形金一六〇万円及びこれに対する満期の日である昭和四九年五月一五日から支払済まで手形法所定の年六分の割合による利息、並びに前記請負代金残金の内金二六〇万円及びこれに対する本件工事完成引渡後で昭和四九年(ワ)第一〇三二三号事件の訴状送達の翌日である昭和四九年一二月一日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の各支払を求める。

四  請求原因に対する認否

1  請求原因第1項の事実は全部認める。

2  同第2項のうち(一)項及び(三)項の事実は認める。同項(二)項のうち完成引渡があつたこと及び工期の約定がなかつたことは否認し、その余の事実は認める。本件契約の工期は昭和四八年七月末日である。

五  抗弁

1  本件契約の工事代金一五九〇万円のうち金四〇万円については、原告、被告、訴外田中正司間に同訴外人が被告に代つて原告に支払い、被告は支払の責を負わない旨の約束が成立した。

2  本件工事には、別紙設備工事瑕疵一覧表(以下瑕疵一覧表という。)のとおりの瑕疵があり、その修補には同表の工事代金欄記載のとおりの工事代金がかかるので、被告は右工事代金合計金九八五万五八二五円の修補に代る損害賠償請求権を有するから、被告は同債権と本件契約の請負代金残金(以下本件工事残金という。)三八〇万円を対当額において相殺することとし、昭和五六年一月二一日本件口頭弁論期日において右相殺の意思表示をした。

3  仮に前項の主張が認められないとしても、被告は原告のなした設備工事の不良により昭和四九年七月三一日ころ給湯管の一部が切れて湯が一階の天井より流れ出したために二階の床をはがして修理し、その費用として金六〇万二一一〇円を要したので右不良工事による損害賠償請求権と本件工事残金三八〇万円と対当額で相殺することとし、前項と同様相殺の意思表示をした。

4  仮に前各項の主張が認められないか認められた損害賠償額が原告の請求額に達しなくても、原告と被告は、昭和四八年一二月三一日に、本件工事の補修工事を昭和四九年一月一五日までに完成できない場合は違約金として工事完成まで一日金一〇万円を支払う旨約し、右補修工事は昭和四九年一〇月七日現在まで完成していないから被告は右違約金として金三八〇万円以上の請求権を有するので、これと本件工事残金三八〇万円を対当額で相殺することとし、昭和四九年一一月二二日本件口頭弁論期日において右相殺の意思表示をした。

六  抗弁に対する認否

1  抗弁第1項の事実は否認する。

2  同第2ないし4項の事実のうち各主張の日に相殺の意思表示があつたことは認めるがその余は否認する。右第2項の被告主張の工事の瑕疵についての原告の主張は別紙設備工事瑕疵一覧表の原告の主張記載のとおりである。

七  証拠関係(省略)

別紙

設備工事瑕疵一覧表(省略)

手形目録(手形判決添付と同一につき省略)

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